出演/中井貴一、寺脇康文、相島一之、堀内敬子、生瀬勝久
同じものをめざす同士の友情と才能の差のなにやら身につまされる話。
舞台は19世紀末、パリ・モンマルトルの一角のボロアトリエ。そこを共同で借りている4人・若き日のスーラ(中井貴一)、ゴーギャン(寺脇康文)、ゴッホ(生瀬勝久)、シュフネッケル(相島一之)の元に絵のモデルとして雇われてやって来たムーラン・ド・ラ・ギャレットで働くルイーズ(堀内敬子)。
始めは周りに迷惑をかけまくるゴッホに振り回される3人3様の仲間と傍観者1人のコメディタッチのやりとりで進むが、ルイーズをめぐる鞘当てなどを経て、次第に彼らの内面の葛藤や嫉妬、エゴが見えて来る…。
先日「大エルミタージュ展」でゴーギャンのタヒチ時代の絵を見たのはなかなかタイムリーだったかもしれない。しかし、芝居の中では画家の話なのにお遊びのシーン等を除き絵は一切観客の方に向けられず、役者のセリフや態度で観客側でそれぞれ想像に任せる形を取っていた。
そして舞台に現れないくせ一番エライ言われようなロートレック等も含め、実在の画家達のエピソードを交えながら、個性的な4人それぞれの対比を見せてくれるのにはさすが。役者さんがまたそれをガッツリ見せてくれて大満足。
4人の中では出世頭と言われながらゴッホの才能に嫉妬し彼を追いつめる行動に出るスーラ。仲間内のバランサーで人はいいが最後には絵の才能はないと宣告されてしまうシュフネッケル。我侭に周りを振り回しながらも自分の世界を見つめてるゴッホ。奔放に見えてその実周りの才能も分っており気弱な面も見せるゴーギャン。
パンフレットでどなたかが「芸術家同士の間で友情は成り立つのか」と書かれていたけど、強く感じたのは「才能は分るのも分らないのも哀しいもの」ということ。特にスーラがゴッホ自らが破った絵を抱えて嘆くシーンでは知らぬうちに泣いていた。
芸術家の誰もがミューズには愛されたい。でも、誰もが才能は手には出来ない。自分にないものを見ると嫉妬も起こる。穿ち過ぎかもしれないけど、もしかすると彼らを翻弄するルイーズは芸術の神と二重写しになっていたのかもしれない。
しかし、こんな重いテーマを含みながらもいつものように笑いを取り混ぜて見せてしまうのが三谷さん流か。笑わせながらも少し作風が変わって来たようにも思うけれど。
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P.S.関係ないけど今年になってからも狂言や4/15「恋の骨折り損」3/25「HEDWIG AND THE ANGRY INCH」等の舞台、映画の感想が書けてません。ダラダラ人間にはブログも思うように活用出来ぬようで…。